educationsalonの日記

Education Salon

教育についての記事。教育現場のあまり知られていない情報をあげています。

共通テストの記述式問題なんてうまくいくハズがない

少し前に話題になった共通テストの記述式問題。
最終的な決着は「身の丈発言」で幕引きとなりました。
文科省の達成感のために、強行すると予想していたのですが、想定外の力学がかかり、延期となりました。
(身の丈発言とは

           f:id:educationsalon:20200127004618j:plain
https://www.asahi.com/articles/ASMBX5K15MBXUTIL038.htmlより引用)
しかし、この記述式問題はうまくいかないことがわかっていました。
今回はその理由について述べていきます。

 

  • そもそも文字データが足りない。

当たり前の話ですが、センター試験のようなマークシートではないので、機械による答えの読み取りが難しくなります。
AIによる読み取りを行うつもりだったのでしょうが、文科省の中にAIに詳しい方がいないのでしょう。(そもそも官僚の中には理系が少なすぎます。)
現在のAIによる目は画像認識は得意ですが、文章の読み取りは得意ではありません。
文章の読み取りには2つの力が必要です。「区切る力」と「認識する力」です。
区切る力とは、123を「1と2と3」と区切る力です。
認識する力とは、123を「ひゃく、にじゅう、さんという量だ」と認識する力です。
ぼくたちからすると当たり前のことを機械学習で覚えさせるのには、エネルギーが多くかかります。機械学習のCO2の排出量は凄まじいです。(参考:https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1907/31/news05.html
そういったプログラムを組んだとしても、まだまだ文字の画像データが足りません
少なくとも3年分、150万人程度の文字データは必要でしょう。それでも100%にはなりません。文字のデザインは人によって千差万別です。
最近Googleが小説を丸ごと理解できるAIモデルを発表しました。最先端の技術でこのレベルです。(参考:https://techable.jp/archives/115600
文科省のおじさん方が期待するAIの技術はまだ少し先になると思われます。

 

  • ベネッセには採点能力はない

ベネッセ本体には採点力も問題作成力もロクにありません。だからベネッセ・駿台模試となっています。駿台の採点力、問題作成力をお借りしなければいい模試は作れません。
ぼくは学生の頃にベネッセの模試採点のアルバイトをしていたのですが、「とにかく点数をあげなさい」と指導されました。進研模試は採点基準が甘すぎます。
また、「あなたは大問2ね」と採点する問題が指定されます。何枚分、微積の問題を採点したか全くわかりません。
ずっと同じ問題ばかり採点している、ずっと同じことばかりさせられていると飽きますよね。飽きがみられると、モチベーションも下がり、採点ミスも生じやすくなります。
ダブルチェックは行われていましたが、あの環境だとすり抜ける答案はあるでしょう。

さらに採点業務を行っているのはほぼ全て大学生であり、信頼がありません
京都大学や大阪大学といった有名大学の人間であっても採点できる/できないは別問題です。偏差値の高い大学の学生ならまだしも、指定校推薦やAO入試で入った学生は採点できるほどの偏差値があるかわかりません。
偏差値が全てではないですが、正確な採点業務には偏差値が必要です。
そもそも採点業務は大変です。各大学で採点基準は異なりますし、公開もされていません。
大阪大学の採点基準はかなり厳しく、全然点数をくれません。名古屋大学は意外とやさしく、意外と点数をくれる。といった情報ぐらいしかわかりません。
自分の大学の教授は、どのように採点しているかはトップシークレットで絶対に何も言えないと行っていました。(ちなみに理学部数学科の講師総出で採点基準を作り、採点を行うらしく、寿司が出ると全く役に立たない情報は教えてくれました。)

昨年、全統記述模試で証明問題を解答解説で掲載されている解法でなく、別の解法で解いて×となった生徒がいました。
確かに出題者の意図を汲み取っていないという意味での減点はわかりますが、×はありえません。部分点は生じるはずの答案でした。採点者が違えば得点になっていたかもしれません。河合塾でもこれです。
それを大学受験本番なんていう大舞台で、しかもベネッセがちゃんと採点できるわけがありません。

 

  • センターの平均点が低い中で、新テストにするとさらに下がり、数学離れを加速させる

今年2020年のセンター数学の平均点は数学1Aで52点、数学2Bで49点、合計で101点でした。
昨年2019年の平均点は数学1Aで59点、数学2Bで53点、合計で112点です。
2018年の平均点が数学1Aで61点、数学2Bで51点、合計で112点です。
はっきり言って非常に低いです。今年のセンター数学は傾向が変わったり、めんどくさい問題が出ていましたが、それでも101点は低いです。
この国の学生は数学ができません。(それなのになぜ英語の平均点は120点程度を維持できているのでしょうね)
数理の能力に長けていた日本はどこに行ったのでしょうか?
共通テストのプレテストのような問題にすると、平均点はさらに下がります。40点台になるのではないでしょうか。
低得点勝負になると、みんなできないということで差がつきにくくなります。「やってもどーせとれへんし、数学は4割狙いでいいよ」という生徒が出てきます。
そうなると、この国の数学離れはさらに加速します。それでいいのでしょうか?

 

以上の理由から共通テストは始まる前にうまくいかないことがわかっていました。
一番の被害者は振り回された受験生です
それでも文科省のメンツのために、受験生の声なんて無視して強行すると思っていましたが、とりあえず記述問題はなくなり、延期されました。
今回は学生や大学の声が届いたということなのでしょうか?
「身の丈発言」による炎上の力なのでしょうか?
文科省は地方と都市の情報格差を理解できていませんでした。
試験を民間委託して、試験を作る予算をカットしたいのであればもはや、共通テストを全統マーク模試と駿台全国模試にすればいいと思うんですがねー。

 

ちなみに、現在2021年度の共通テスト(数学)は、プレテスト寄りの問題でいくのか、センター試験寄りの問題でいくのかの発表が行われていません。
2021年度内に模擬問題の発表があると思いますので、それを待ちましょう。
発表が行われれば、このブログでも投稿します。

 

 

いかがでしたか?
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