塾を経営する上で医学部予備校とするのは非常に簡単な方法です.
子どもが減り,現役合格志向が強まっている今,浪人してまで大学に入ろうとするのは医学部か,旧帝大ぐらいです.今や「関関同立は浪人して入る大学ではない」とすらも言われています.
特に開業医のご家庭では,我が子に病院を継いでもらわなければならないと,何年浪人してでも医学部に入れようと巨額の塾・予備校代を厭いません.
何年も浪人するということは,予備校にとってはインカムに繋がるのでありがたい存在ですよね.わざと授業をロクに行わず,もう一年浪人させて収益を得ようとしている医療系予備校も存在するという噂まであります.
駿台や河合塾といった大手集団予備校が行っていた,大勢の生徒から少額を回収するモデルでは経営が厳しくなり,少人数から多額を回収する医学部予備校が乱立しました.医学部専門塾や医学部予備校は今や全国に200校近く存在すると言われています.
工学部や経済学部を目指す生徒が浪人できるのは駿台、河合塾、北九州予備校といった大手集団指導の予備校ぐらいしか残っていません.
その中で医学部予備校・医学部専門塾とするのは学習塾経営としても簡単な方法です.
今回はそのことについて書いていきましょう.
名前が既に広告になっている
医療系専門、医学部専門と冠を背負うと,どのような塾・予備校か,商材が名前だけでわかります.ワンワードで相手に伝える力です.お寿司屋さんに車の修理を頼みに行く人なんていませんよね.それと同じです.
医学部「専門」とつけると,あの難しい医学部の合格を目指す場所なんだと説明せずに伝えることができます.
新しい商品を作ってもその魅力を伝えることは簡単なことではありません.テレビCMを打って,テレビ番組で特集を組んでもらい,認知を獲得して,購入するかを考えてもらい,販売店に足を運んで頂いて,初めて商品が売れます.今でしたらインフルエンサーに頼んで,と全て広告が担う部分です.学習塾や予備校はテレビCMを打ち出すことはあまり多くありませんが,折込チラシは多く発行してますよね.
当たり前のことですが,広告は無料ではありません.商品を開発してもそれを伝えるために,さらに広告宣伝費,つまりお金が必要になります.自社のホームページに載せたり,友達に伝えるといった方法ももちろんありますが,それではマスに訴えかけられません.
扱っている商品と,会社名が同じでしたら,何を行っているのか簡単に伝えられます.
価格設定を高くできる
医学部予備校のメインターゲットとなるのが,医師のお子様たちです.お医者さんのご家庭ですので,家にお金は多くあると知られているため,駿台や河合塾と異なり価格帯を上げることができます.お金に糸目を付けず我が子の合格を求める開業医の方は多くいます.
国公立大学の学費が卒業までに約400万円であるのに,私立大学医学部の学費は最低でも1800万円(国際医療福祉大学)です.それをポンと支払うことができるご家庭でしたら,月々数万円,数十万円の料金は簡単に支払うことができるでしょう.
医学部予備校で個別指導が多いのは,個別指導の方が学習効率が高いということもありますが,1授業あたりの単価を上げることができるからという要素も当然含まれています.
これは医学部専門塾を最初に作った先人の方の影響です.先人の方が医学部予備校の授業料の相場を作りました.
価格帯を下げたとすれば,安かろう悪かろうの力と、開業医の親御様の我が子を「こんなところに行かせたくない」という映えが作用します.
ですので,映えを良くするためにも,医学部予備校は賃料も高く,交通アクセスのいい,綺麗なビルに作られることが多いです.高かろう,よかろうです.
価格の高さは,予備校側のニーズと親御様のニーズにマッチしているとも言えます.
日本一学費の安い医学部予備校とかあったら面白いんですけどね.
医学部受験に特化したプロフェッショナルなんていっぱいいる
どの医学部予備校も,「うちの講師は医学部受験のプロフェッショナル」と謳っています.予備校にとって,講師とその授業は商品ですので,もちろん良いように言います.
何をもってしてプロフェッショナルと言うのでしょうか?
医学部予備校にとってのプロフェッショナルとは,予備校側が勝手に決めた記号に過ぎません.
実際僕自身も予備校側に愛知医科大学,近畿大学のプロフェッショナルと決めつけられました.
「愛知医科大学推薦入試と言えば,藤井先生じゃないですか!」
「藤井先生は近畿大学推薦入試のスペシャリストですから!」
おそらく毎年推薦入試で合格者を出しているからでしょうね.医学部予備校の言うプロフェッショナルなんて,この程度のものです.基準のない曖昧な線引きでは,言ったもの勝ちの世界です.
もちろん,各教室にプロフェッショナルはいるでしょう.しかし,その講師が自分の生徒の担当になるかは別問題です.
日本中に100種類以上あると言われる医学部予備校の全ての講師がプロフェッショナルならば,プロフェッショナルだらけで,おそらく共通テストの平均点が37点になんてなることはないでしょう.
塾の仕事は医者を多く作ることなのだろうか?
医師は昔から人気の職業です.このコロナウイルスによってさらに人気となったとも言われています.
医学部医学科は定員の数を政府が統制しているために,医師の数が増えて,給料が下がるというメカニズムが起こりません.医師という職業はこれから先も安泰でしょう.
しかし,塾・予備校の仕事は医師を作ることなのでしょうか?
次世代を担う子どもたちの仕事は,これまでに誰も見たことのないiPhoneのような世界を一新するモノやサービスを作ることです.
平成元年の時には時価総額が世界の上位30位中21社が日本企業でした.それが平成31年4月の時点で上位30位には日本企業は1社も残っておらず,43位になってようやくトヨタ自動車がランクインします.平成にあたるこの30年間は「失われた30年」と言われ,日本が成長できなかった期間を指します.
なぜ30年間で日本はここまで落ち込んだのでしょうか?
それを端的に表す言葉の一つが「iPhoneを作れなかったから」が挙げられます.
iPhone以前はSONYのウォークマンやPlay Station,松下電器の冷蔵庫や洗濯機を始めとする日本産のモノが輝いていました.しかし,iPhoneが出て世界は刷新されます.
なぜGAFAMと呼ばれるユニコーンがアメリカから立て続けに生まれたか.それはオバマ政権の時に理系に投資したことが要因の一つに挙げられます.
昭和中期ではまだ,東大理科三類(主に医学部)と理科一類(主に理学部や工学部)の入試の倍率は変わりませんでした.これは「俺は将来誰も見たことのないデバイスを作るんだー!」とモノづくりに対する希望が,「医師になりたい」という希望と同程度あったということでもあります.
しかし,平成になり,大学が大量に造られた結果,文系学部を作る方が理系学部を作るよりも安価で簡単なために,文系の学生が増えました.つまり,日本はアメリカとは逆に文系に投資をしました.
その結果がiPhoneを作れなかった国,日本です.
土地面積のない日本は.材料を輸入して,製品にして付加価値をつけて,輸出して外貨を稼ぐという加工貿易で生計を立ててた国でしたが,iPhoneを作れなかったことで,その方法で外貨を稼ぐことが難しくなり,失われた30年と言われるようになります.
失われた30年の脱却の方法の一つとして,平成から令和へ元号改正もされました.
子どもたちの課題は未来を作ることです.そのためには新しいモノづくりを行わなければなりませんが,そのモノづくりの中核を担う工学部や理工学部は今や,ナンバー1である医学部にに入れなかった,ナンバー2の集まりになってしまいました.なぜか優秀な学生はお医者さんになっていきます.
科学の発展と共に医学はまだまだ伸びるでしょう.しかし,医者から孫正義やZOZOTOWN元代表の前澤友作といったイノベーターはなかなか生まれません.
2020年度の東海高校(医学部合格者数日本一の愛知県の進学校)の1位の学生が東京大学理科一類に進学しました.これは少しずつ,モノづくりに希望が見えるようになった子どもの増加の兆しかもしれません.
まとめ
学習塾・予備校は民間企業ですので,営利を求めなければなりません.その方法の一つが「医学部専門」という冠をつけて,医学部受験に照準をあわせることだと上で述べました.
Education Salonでも毎年多くの医学部合格を出し,私もありがたいことに医学部受験に定評があると言われています.しかし,「医学部専門」という言葉をつけないのは,医学部以外の選択肢にも光を当てたいからです.
大切なことは志です.
医者になりたいという志と,パテシエになりたいという志.
どっちが立派かなんて話しますか?
Education Salonはあくまでsalonであり,コミュニティビジネスです.
子どもが持ち得た志全てが立派であり,大切なものです.それを応援することが我々の仕事です.
医学部だけでなく,その志ひとつひとつを応援したいと考えています.
いかがでしたか?
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