educationsalonの日記

Education Salon

教育についての記事。教育現場のあまり知られていない情報をあげています。

生徒が増えると、面倒見は薄くなる

今は「ひとりひとりに合わせた!」「個別カリキュラム!」など,「個別」指導,「個別」が売れています.

「個別なしで,」という言葉が当たり前になり,「個別」という言葉が個別指導を指すことが自然となりました.

 

個別指導,集団指導に関わらず,学校や学習塾・予備校は構造上、生徒数が増えると面倒見が薄くなります.

例えば,大阪大学と立命館大学を比較してみましょう.

ホームページで公開されている教授数は大阪大学は992人,立命館大学は662人で,各大学の学年あたりの生徒数は大阪大学は2878人,立命館大学は7904人です.

大阪大学は,生徒2878人÷教授992人≒2.9人

立命館大学は,生徒7904人÷教授662人≒12人

大阪大学の方が教授1人当たりが抱える生徒数が少なくなります.

大学は教授だけでなく,准教授,講師,助教,そして事務員さんから食堂のおばちゃんまで様々な形で働いておられる従業員さんが一丸となり,一つの大学という教育施設を作っています.ですので,上の計算は正確な値とは言えません.

しかし,面倒見の良さを測る指標の一つとは言えないでしょうか?

学習塾も同じことが言えます.

会社としては生徒が増えると、収入も増え、スタッフも増えて,環境が変わります.成長する自社が楽しくもなるでしょう.しかし,サービス面ではいいこと尽くしとは言えません.

今回はそのことについて書いていきましょう.

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講師1人当たりの生徒数の増加

なぜ面倒見が薄くなるのでしょうか?

それはもちろん,講師1人あたりの生徒数が増えるからです.

上で示したように,全生徒数÷全講師数で講師1人当たりの担当できる生徒数が求められます.

 

例えば,

講師が10人の学習塾で,生徒が10人でしたら,

生徒数10人÷講師数10人=1人で,講師1人につき,生徒1人という計算になりますが,

講師が10人の学習塾で,生徒が100人でしたら,

生徒数100人÷講師数10人=10人で,講師1人で生徒10人の面倒を見なければならなくなります

生徒数が増えれば,この値がどんどん大きくなる,生徒1人に対する担当講師数が減っていき,生徒1人あたりの講師の時間は減っていきます.

 

集団指導の場合では,生徒数が増えれば増えるほど,生徒全体にまで目が行き届かなくなります.教室の大きさにもよりますが,100人以上の授業では,一番後ろの壁際の生徒が授業中にスマホを触っていてもなかなか見えません.

 

個別指導の場合では,生徒数が増えれば増えるほど,1人あたりの学習計画を作る時間が減っていきます.個別指導では講師ひとりひとりが,どの教材を使うのか,志望校からどこまでの知識を伝えるのか,いつまでにどこまで進めるのかなどなど,生徒に合わせた授業計画を作らなければなりません.

その授業計画を作るための時間が,生徒が増えれば増えるほど少なくなる,つまり,面倒見が薄くなるということです.

 

生徒数が増えれば増えた分だけ講師の採用を増やせばいいですが,そんな簡単にいい講師は見つかりません.いい講師と呼ばれる方はすでにどこかで働いていて,そこでいい講師だから,別のところに行ってもいい講師でいることができます.

どこの予備校もこぞって「うちの講師はスペシャリスト」と謳っていますが,スペシャリストってそんなに多くいるのでしょうか?数が少ないからスペシャリストなのではないでしょうか?

どこの塾・予備校でもスペシャリストがいるのであれば,共通テストの数学の平均点が38点になんてならないでしょう.

 

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面倒見の良さが商品になった

元々,子どもが多くいた頃は大手予備校や学習塾は授業が商品で,学習計画や面倒見は商品ではありませんでした.

自分が浪人して駿台に通っている時も,クラス担任との面談なんて年数回程度でしたし,授業担当の講師からの宿題の指示すらありませんでした.つまり,何をするべきか,どのように勉強すればいいか自分で考えて動けというスタイルが基本でした.

子どもが多いので,担任も生徒1人あたりに割くことのできる時間は限られています.模試の結果を見てもポイントが上がった下がった程度しか分析することはできなく,ましてや1人の生徒の志望校に対して担任が悩み,考え尽くすことなんてできませんでした.

 

しかし,子どもが減ったことで,学習塾や予備校は少ないパイを奪い合うことになり,教育サービスは価格競争が激化し、求められるものが集団指導から個別指導へのシフトしていく中で,面倒見の良さが商品の一つになりました.自分の代わりに担任や講師が悩み,考え尽くすサービスです.

 

テキストの使い方から,ノートの取り方まで,宿題の進め方や過去問の解き方,またそれを行う日時まで,全ての学習計画を塾がデザインするという面倒見の良さは,生徒はそれに従うだけで成果が上がるという結果を残すので,学習において最適な方法と言えます.

欲しいものを欲しい人に届けるというビジネスの基本が成立します.

その結果が,自分で考えられない子どもではないでしょうか?

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個別指導が台頭してきたことによるデメリット

学習塾が学習計画やスケジュールを立てる,生徒はその計画に基づいて学習を進めるという方法は,受験においては最適な方法の一つと言えます.しかし,そこには自分で考えるという行動が欠落しているために,自分の頭で考えることがどんどんできなくなっていきます.これはデートプランを立てられない高校生からも読み取れます.

 

大手集団予備校や学習塾の,授業はするが学習計画や模試の分析は自分でやりなさいというスタンスができなくなってしまいました.これは単純に、子どもが減ったことによる、個別指導の台頭という民間教育のサービスの変化による弊害と言えます.

 

面倒見の良さは受験においては有効でしょう.しかし,塾はずっと自分のキャリアをデザインしてくれることはありません.どこかで自立という大きな課題がやってきます.

面倒見の良さと自立はトレードオフの関係です.

面倒見を良くすれば,自立することが難しくなり,自立をしてもらうことを求めれば,面倒見が良くないとされ生徒数が減り,経営が成り立たなくなる.

 

学習塾はサービス業です.

サービスを受ける者,生徒というお客様がいてこそ,初めて成り立つビジネスモデルです.

ですので,企業は消費者のニーズを満たすサービスを作ろうとする企業努力をするのが当たり前であり,面倒見を良くしようと「個別」という言葉を売ろうとすることは自然な流れと言えます.

果たしてここまで考えて,「個別」という言葉を売っている学習塾はどれほどあるのでしょうか?

収益のことしか考えていない予備校はみなさんが思っている以上に多く存在します.

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まとめ

企業の成長を考えれば,利益を求めることは大切です.

ですが,学習塾で利益が大きくなればなるほど,面倒見が薄くなることも事実です.

教育においてはむやみやたらとスケールさせようとすることが正しいとは言えません.拡大させることには愛情が分散してしまうというリスクを孕みます.

地方の学習塾のように,小さな経済圏でとどまり続ける方が,自分のこだわりを育てることができて面白かったりします.お客様と深い絆で繋がって,拡大させないというのも選択肢の一つと言えます.これが価値主義のいいところではないでしょうか.

 

 

 

いかがでしたか?
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